時空自在

タンジールから中国へ・そして帰還

2023-01-01から1年間の記事一覧

『闇の奥』解題

いわずとしれたコンラッド著『闇の奥』を分析批評します。 【論点提起】 19世紀末(20世紀初頭)に書かれた本作はニーチェら「生の哲学」の影響を色濃く受けていると思われ、世紀末的時代の頽廃的雰囲気を漂わせている。(『闇の奥』の出版は1902年。コンラ…

『誉れの剣』解題

イーブリン・ウォー著『誉れの剣』を読んだ。 最近他でも続いている、日本語に訳されていなかった大型名作の待望の翻訳である。 (白水社版・小山太一訳) まず著者について。1903年生まれ1966年没。自らが所属したイギリス上流階級の描写を得意とし、また離…

『虎よ、虎よ!』のイカれぐあい

古典SFにハマっていて、アルフレッド・ベスターによる1956年作『虎よ、虎よ!』を読んだ。テレポーテーションとかテレパシーとか何やらなつかしい。文庫のカバー画が秀逸。 読み物としてはメチャ面白い。 一方で、主人公の行動原理は理解出来るが共感出来な…

『サラゴサ手稿』所感

『サラゴサ手稿』(ポトツキ作・岩波文庫)読んだ。上巻はめっちゃ濃い怪異譚だが、中巻は支配欲と愛情の葛藤だったり善悪の転倒が物語られていく。また下巻では、啓蒙時代を背景に、神と科学の関係やイスラム教の中でも虐げられてきたシーア派の内情が描か…