時空自在

タンジールから中国へ・そして帰還

2021-01-01から1年間の記事一覧

読書感想文『恥辱』

最近はまっているクッツェー。 直近では『恥辱』(鴻巣友季子訳・早川書房)を読んだ。 カフカ的な転落をモチーフにしているが、カフカのような形而上学的な不条理でなく、リアルなアカデミズム内部のハラスメントやアパルトヘイト撤廃という現代社会が抱え…

『日本の弓術』 全体主義の時代のオリエンタリズム

『日本の弓術』(オイゲン・ヘリゲル著) 戦前、日本人弓術家の薫陶を受けたドイツ人哲学者が没我の境地に至るまでを簡潔に綴った書。 著者ヘリゲルは戦後非ナチ化法廷で「消極的な同調者」との判決を受けている。 日本に滞在していた時、弓術を通じて感動的…

見えざる者たちへの忠誠-クッツェー著『エリザベス・コステロ』

クッツェー著『エリザベス・コステロ』 エリザベス・コステロなる架空の女流作家がノーベル賞作家クッツェーの分身のような語り部である事の詳細は、くだくだしければ略す。興味を持たれたら本書を一読されたい。 本書では、まず邦訳では4章にあたる「悪の問…

ハーバード・スペンサー ファンダメンタルな自由思想

ハーバード・スペンサーを読んでいる。 スペンサーは19世紀イギリスの哲学者で、一般的には社会ダーヴィニズムの提唱者として知られる。ダーウィンの進化論のアナロジーを展開している箇所は本書には見当たらないが。それよりも、小さな政府を主張し、個人が…