時空自在

タンジールから中国へ・そして帰還

平成の終り③

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【人口減少】

 

 私は、経済的凋落の根本要因は人口減少だと考えている。

 

 下記リンクを一読されたい。

https://toyokeizai.net/articles/-/218313

 

 結論を言うと、今後50年から100年のスパンで1,000万人単位の移民を受け入れていかなければこの社会は崩壊する。

 日本の人口ピラミッドは、2015年時点ですでに1970年代前半生まれの団塊ジュニアが1歳児人口の倍になるなど、紡錘形から限りなく逆三角形に近くなっている。若年人口が減少し続けているので出生可能人口を母数として出生率を上げてもこの逆三角形化に歯止めをかけていくことは難しい、というより無理である。現在1.4人といわれる出生率を倍にするような施策が可能だろうか?

 

 このような現状の人口ピラミッド出生率から予測される日本の近未来については統計的な裏付けをもって確実に予測される。官僚や学識層がそれを知らないなどという事はなく、わかりきった事実である。ただしそれは、1941年時点で日本の獲得資源量や鉄鋼生産能力から対米戦が必敗であるとわかっていながら戦争にのめり込んでいったのと似て、世界を観照的に理解するのと実践的に理解するのでは天と地ほどの違いがあるのだ。

 

現在の日本社会はすでにディストピアである。

 

終末医療病棟をご存じだろうか? 各種病院から、退院させる見込みがないと判断された高齢の患者だけを集中させる病院である。そこで施されるのは治療というより延命だ。このような病院では、かなり多くの患者がいる病棟であったとしても食堂で患者のための食事が用意されることはほとんどない。。大抵の入院患者が胃ろうだからである。

また、病棟の通路は通常の病院のように患者が行き来しておらず、ひっそりしている。殆どの患者が自力で車椅子を操作することすら困難だからである。病室内にトイレが必ずしも併設されていなかったりするのは、患者達はそのような理由で身動きが出来ず、オムツを常用しているためだ。

この、未来予測型のSF映画のような光景がすでに日本のあちこちで出現している。ただ、ひっそりと人目につかないだけの事だ。

 

もう一つ。私事だが私の勤務する企業は社員数50名。その50名が一同に会したミーティングで、平均年齢30歳程度(いわゆる一昔前の男性の結婚適齢期)であるにも関わらず、その中で昨年子供をもうけたのは二名だけだった。そもそも、居合わせたほとんどが結婚適齢期であるにも関わらず、既婚者は数名にすぎない。贔屓目に見ているわけではないが、わが社の給与水準が中小企業平均中で特に低いわけでなく、労働環境が劣悪だという訳でもない。

 

日本社会がなぜ雪崩を打つような人口減少に向かっているのかの説得的な分析もきわめて少ない。

医療の発達による平均寿命の延長という逆三角形の上辺が拡大していく要素と、出生率の減少という底点の要素がキャップとなり人口構成がどんどんイビツになっているわけだが、出生率の減少については複合的な要素が絡み合っていると考えられる。

乳児死亡率低下

核家族

都市への人口集中

女性の社会進出

格差拡大

 

そして私は、前項で触れた経済的凋落は、経済学的範疇で解決できるものでなく、破局的な人口減少にもとづくという確信に近い仮説を抱いている。逆に言えば、高齢者人口の半分まで若者人口が減り、この傾向が加速している現状と未来において、どのような社会的発展が見込めるというのだろうか?

 

【結び・平成の30年間とは?】

 

一言でいえば「失われた30年」というに尽きる。

 

社会現象的には都市圏への人口集中とライフスタイルの転換、所得格差の拡大が晩婚化、少子化を抜き差しならぬものにし、若年人口と高齢人口の逆ピラミッドを恐ろしい勢いで加速させてきた。

経済的には国内産業の空洞化とデフレスパイラルによって輸出立国の基盤の崩壊と社会の多数層における所得の減少をもたらした。結果、国際競争力を著しく減衰させてきた。

政治的には冷戦の終焉と同時に国内政治の刷新や既得権の縮小を実現する機会があったにも関わらず、ビジョンとガバナンスの欠如によりその機会を悉く逃してきた。

 

これら社会・経済・政治の問題は言うまでもなく根本の部分で複雑に絡み合っている。そしてこの30年間に打たれてきた様々なスローガンの下での経済政策が悉く枝葉の対処療法でしかなかったことに賢明な人なら気づくだろう。

 

日本社会を50年、100年の周期で再生させていくためには人口構成を抜本的に変えていく事が必要である。

そしてそのためには移民国家への公然とした転換が必要である。必要なのは技能実習生制度で想定するようなmigrant(出稼ぎ労働者)を場当たり的に増やす事ではなく、日本に末代まで骨をうずめてくれるモチベーションを有したimigrant(移民)を増やす事である。単純労働の担い手だけでなく、高度人材を世界各地から誘致し、それらの人々による文化的社会的なインパクトをむしろ歓迎すべきである。

 

だって、そうでしょ?

30年間、変われなかったんだから。原発事故のような、既得権益を根底から覆しかねない危機ですら、既得権益の保身で誤魔化してきたのだから。

 

 まもなく時代は一巡りする。残念ながら30年間の負債を重く背負ったまま。そして我々のこの社会は一度焼け野原のようになってから初めて再生を始めるだろう。